糖尿病と動脈硬化症

 糖尿病は自覚症状のないままにいつの間にか進行し、全身の血管をボロボロにしてしまいます。腎機能が悪化して透析を余儀なくされたり、失明足壊疽を起こすことはよく知られていますが、これらは全て血管が痛んでしまうことが原因です。

 腎臓では血液をろ過して尿を作り出しています。血液をろ過するための毛細血管が痛むと血液中の大切な蛋白質がだだもれとなって尿に混じるようになりますが、その前触れとして蛋白質より小さな微量アルブミンが尿に混じるようになります。そのため糖尿病の初期の段階での血管障害を推し量る手立てとして、尿中の微量アルブミン量を測定します。定期的に尿中微量アルブミン量を測定することにより糖尿病の進展を推し量り、悪化を予防するための適切な治療を行うことができます。

 また糖尿病は動脈硬化症とも密接に関係しています。糖尿病のある方は動脈硬化が悪化しやすく、脳梗塞心筋梗塞などを起こす可能性が高くなります。そのため糖尿病のない方よりも厳格な脂質異常症の治療が必要となります。コレステロール値測定と血管の様子をみる頚動脈エコーで、定期的に動脈硬化の状態を把握することが重要です。

 今や糖尿病の治療には様々な働き方をする薬剤が使用可能で、今までインシュリン治療をしなければならなかった方が内服薬のみで治療可能になったりしています。ご自分の糖尿病の状態を自覚して適切な食事や運動習慣を身につけることが基本であることは変わりませんが、採血・尿検査の結果をその場で把握して適切な治療をいち早く行い、少しでも糖尿病の悪化を食い止めていくことが大切です。