脂質異常症と動脈硬化症

 健康診断を受診すると、総コレステロール・HDLコレステロール(善玉コレステロール)・LDLコレステロール(悪玉コレステロール)・中性脂肪の4項目が測定され、基準値を逸脱すると脂質異常症と判定されて生活指導や治療の対象と診断されます。一般的にはLDLコレステロールと中性脂肪を下げるために、そしてHDLコレステロールを上げるために指導や治療が行われますが、性別年齢高血圧糖尿病心臓疾患などの既往歴や合併症の有無によって、どこまで数値を下げるべきなのかが変わります。弱めの薬から強めの薬に変更したり2〜3種類の薬を併用したりして、その方の状態にあった治療を進める必要があります。

 脂質異常症が放置され持続すると、動脈の壁の中にコレステロールが次第に貯留し動脈硬化症が進行します。高血圧や糖尿病によって引き起こされる動脈硬化症が、脂質異常症によっても悪化してしまうのです。高血圧や糖尿病はしっかりと治療しているのに脂質異常症は放置している患者さんが時々見られますが、動脈硬化症に合併する脳梗塞や心筋梗塞を予防するためには脂質異常症の治療も同じように重要なのです。また超音波検査で脂肪肝(肝臓に脂肪が貯留した状態)と診断される方も少なくありませんが、脂肪肝の1割が肝炎肝臓癌に進展するということがわかっています。脂質異常症の治療薬の中で脂肪肝を改善すると証明された薬剤を用いることも大切な選択肢の一つです。

 血液検査で脂質の数値の変化を確認するのと同時に、脂肪肝や動脈硬化症が改善していく経過を超音波検査で定期的に確認しながら治療を継続していくことが大切です。